リスク対応、まずは事業継続力強化計画から
BCP(事業継続計画)の簡易版ともいえる、「事業継続力強化計画」を策定し経済産業大臣の認定を受けると、様々なメリットがあります。
この記事では、事業継続力強化計画とそのメリットについて解説します。
この記事のポイント
事業継続力強化計画とは何かがわかります。
計画を作り認定を受けるとどのようなメリットがあるかがわかります。
目次
はじめに
何もないときにはあまり意識することがないのが「リスク」です。
大雨・地震等の大規模な自然災害はある日突然起こります。私が住む北海道でも2018年9月6日、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震が発生し、それをきっかけに大停電が発生、発送電が回復するまでに2日以上を要しました。この間、企業は機能が停止し大きな損害を被りました。
また、2020年には新型コロナウイルス感染症が流行し、感染症分類が5類と変更されるまでの3年にわたり、様々な制約が続いたため、この間に事業構造や運営の転換を迫られた企業が多くありました。
それだけでなく、サイバー攻撃によるリスクも増加しています。近頃では、標的としたPCのデータを読み出せないように暗号化し、解除するために身代金を要求する「ランサムウェア」により、企業や病院の運営が停止してしまったという報道をよく目にします。
事業が止まってしまうことが、個々の企業だけでなく、サプライチェーンや市民生活にも大きな影響を及ぼすことにつながるため、企業にはこれらのリスク対応を事前に準備しておくことが強く求められています。
そのために役に立つのが、BCPの簡易版ともいえる、事業継続力強化計画です。
事業継続力強化計画とは
事業継続リスクを回避・緩和できるよう、防災・減災に取り組む中小企業が、その取り組み内容(事前対策)をまとめた計画が「事業継続力強化計画」です。
国は、中小企業の自然災害等への事前対策を促進することを目的に、この計画を策定した企業への認定・支援制度を実施しています。
同様のものに、事業継続計画(BCP)がありますが、事業継続力強化計画はそれよりも簡易な内容で、中小企業がまず取り組みやすいものとなっています。
事業継続力強化計画の内容
事業継続力強化計画には、自社におけるリスクの認識、初動対応手順の設定、具体的な事前対策の検討、実効性確保のための取組等を盛り込みます。
自社におけるリスクの認識とは、水害、地震災害のハザードマップ等を活用し、自社の立地場所にどの程度の被災可能性があるかを確認すること、またそれに基づいて、発災時には自社の事業にどの程度の影響が生じるかを考えることを指します。
初動対応手順の設定では、発災直後に誰がどのような手順で何をするかを検討し、計画します。
具体的な事前対策の検討とは、リスク認識に基づき、「ヒト・モノ・カネ・情報」の経営資源に対し、事前にどのような備えができるかを考えることをいいます。
実効性確保のための取組とは、平時において、訓練や従業員への浸透をはかるために実施する内容を指します。
また、この計画には、1社で作成する「単独型」と、複数の企業が連携して作成する「連携型」があります。
事業継続力強化計画の認定制度とは
中小企業強靭化法に基づき、事業継続力強化計画を国が認定する制度です。
認定を受けた中小企業には、つぎのように、税制、融資、補助金申請などの面でメリットがあります。
認定を受けた中小企業に対する支援策
①日本政策金融公庫による低利融資
設備資金、長期運転資金の貸付利率を0.9%引き下げ
②中小企業信用保険法の特例
別枠での追加保証及び保証枠の拡大
③中小企業防災・減災投資促進税制
計画に基づき取得した防災・減災設備(自家発電設備等)に対する特別償却(取得金額の18%)の適用
④経済産業省の補助金申請審査で加点措置
ものづくり補助金、IT導入補助金など国の補助金の採択審査において、審査点に上乗せがあります。
⑤認定ロゴマークの使用・企業名の公表
被災時の事業継続性が高いと認められ、取引先や顧客からの信用を得ることができます。
これらのほか、認定企業に損害保険料の割引を提供している保険会社があります。
結び
事業継続力強化計画の策定と実行は、企業がリスクに備え、事業を持続させるために重要です。自然災害やサイバー攻撃などのリスクに対応するために、事前の対策を準備し、経済産業大臣の認定を受けることで、金融支援策や補助金などのメリットを享受することができます。
また、認定ロゴマークの使用や計画策定企業名の公表により、信頼と信用を得ることも可能です。
企業は事業継続力強化計画を活用し、リスク対応に積極的に取り組むことで、持続的な成長と安定した経営を実現できるでしょう。
フォルティス経営サポートでは、事業継続力強化計画づくりなど、企業のリスク対応をお手伝いします。まずは、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
※2023年12月現在の情報です。制度や事業を活用する場合には、最新の情報をご確認ください。